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“時の重み”を感じることになった味噌造りと、土井善晴さんの『お味噌知る。』

悠々です。もはや子育て期は“懐かしい”と感じる世代になってしまいました。私は、聖教新聞の教育・子育て欄の担当記者を15年以上経験しました。ちょうどその期間が、まさに私自身の子育て期と重なっていたのです。

ここでは、そんな子育て期を振り返りながら、いま思うことを時代の変化も交えつつ、つづらせてもらいます。ビビッドなエピソードは、現在進行形で書いてくれている人たちに譲るとして、私は子育て期間に自分が読んだ本を軸にして書いてみたいと思います。

子どもと一緒に何かに取り組むことは、親も一緒に楽しみながら、親子が同じ方向を向けるのが素晴らしいと思っています。例えば、小さな植木鉢に種を植え、芽が出て葉が開き、すくすくと育っていく様子を観察できることなど、その典型といえるのではないでしょうか。
 
わが家でも、親子でいろんなことにチャレンジしましたが、その一つが自家製味噌造りでした。私も妻も、それぞれの家庭で味噌造りをした経験があったわけではなく、まったくの初心者。昨今は手作り発酵食がブームといわれているので、情報も豊富です。ネットで調べれば、たくさんのレシピが詳細な画像付きで出てきます。
 
私たちは、最初は新聞のコラムで味噌造りの記事を読み、興味を持ちました。ほかにも何人かの味噌造りのレシピを調べ、人によって微妙なところに違いがあったので、わが家はこれでいこうという方針を決定。それからは説明通りに材料を買いそろえ、初めての料理を作るような気分でやってみた、という感じでした。
 
味噌の材料は、大豆と麹と塩の3つです。それが発酵によって、あのおいしさを生み出すのです。工程の中で、大豆をゆでて、すりつぶした後に、麹と塩を混ぜ、空気を抜くために“味噌玉”を作ります。
 
この“味噌玉”を作るときは、子どもたちの出番です。楽しく参加できると思います。前日に吸水などの準備をするので、つごう2日間かけて仕込みさえすれば、あとは“時間”が味噌を生み出してくれます。
 
均等に作るために天地返しをする場合もありますし、お住まいの環境の違いなどで、カビ対策を考えないといけないこともありますが、基本的には、あとは楽しみに待つだけです。
 
でも、子育ての渦中に味噌造りをするには、この待つ時間を有効に活用することが大事なんだと思います。ただ放っておくのではなく、どうなっているか、“気にかけながら待つ”感覚です。
 
仕込んで待つことの楽しさを、子どもにも存分に味わってもらいましょう。それには、親の想像力や声のかけ方の工夫も大切になってきます。
 
「手前味噌」という「自分で自分のことをほめる」という意味の言葉に、味噌が使われているのも象徴的です。まさに、自分で作ったものを自慢したい気分になるのです。それは、子どもも同じ気分を味わえるということでもあります。出来栄えは、それぞれの家の個性も出てきて、味も微妙に違ってくるものです。
 
自家製味噌で味噌汁を作れば、おいしく思うのは当たり前だと思います。どんな具を入れても、自分たちで造った味噌の力で、わが家ではすべてがおいしい味噌汁になりました。そういうものが一つあるだけで、その場、その日の食事を作るだけの食卓とは違って、“時の重み”みたいなものが加わる感じです。
 
一般的には1~2月に仕込むのがベストといわれますが、3~5月に仕込むことを推奨する人もいて、春に仕込んだものはすっきりとした仕上がりになるようです。まだ間に合います(笑)。興味を持たれた方は、ぜひチャレンジしてみてください。
 
最近、土井善晴さんと土井光さんの『お味噌知る。』(世界文化社)という本を読みました。そこには「味噌は生き物です。穀物を分解する目に見えない菌の活(はたら)きで作られます」(P2)とした上で、厳しくもシンプルな自然の摂理がつづられています。

「さまざまな意味で
おいしくなれば 発酵
逆にまずくなれば 腐敗です。」

同P2

そして、私も初めて知ったことがありました。

「麹菌(アスペルギルス オリゼ)は
 日本にしかない菌なので 国菌と言われます。
 味噌だけでなく 酒 醤油 酢 みりん
 日本の調味料のすべてが
 麹菌から造られています。」
 

同P3

読んだ後、何だか、そんなすごい営みの輪の中に、自分も連なることができている不思議さに包まれました。

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