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ワクワク感と好奇心に満ちた“ワンダーハート”で

悠々です。もはや子育て期は“懐かしい”と感じる世代になってしまいました。私は、聖教新聞の教育・子育て欄の担当記者を15年以上経験しました。ちょうどその期間が、まさに私自身の子育て期と重なっていたのです。ここでは、そんな子育て期を振り返りながら、いま思うことを時代の変化も交えつつ、つづらせてもらいます。ビビッドなエピソードは、現在進行形で書いてくれている、すなっち、はっしーたちに譲るとして、私は子育て期間に自分が読んだ本を軸にして書いてみたいと思います。


 子育て期は、親の一生という長い目で見ると、人間としても大人の入り口あたりにいる感じなのかもしれません。その時期に、前回触れた「神話的時間」を味わう体験をするということは、その後の人生で生かしていくための、いわば重要な力、感性を身につけるということにつながると思うのです。

※前回の「神話的時間」についてはこちら↓

 ちょっと大げさに聞こえるかもしれませんが、これから延々と続く人生という日々は、流れに身を任せていると、あっという間に「近代的時間」「合理的時間」ばかりが詰め込まれていきます。そうならないように、自分の意思で「神話的時間」にスイッチを切り替えられるようになる、そんな柔軟性があると、だいぶ助かるわけです。
 
ここで言う「神話的時間」とは、私なりに表現すれば、ワクワク感と好奇心に満ちた“ワンダーハート”を活性化させるということです。心に愉しみを抱いている時間、とも言えます。
 
よく「オン」「オフ」の切り替えができるといい、と言われますが、わりと多くの人は、「オフ」とは何もしない、ダラッとして休息するもの――そう受け止めがちです。現実的に、体が休息を求めているときもありますから、そういうときは「何もしない」という選択肢は正しいと思います。
 
でも、それが変な習慣になって、休日はいつもだらだらと過ごしているというのでは、もったいないのではないでしょうか。かといって、「オフ」がいつも決まったルーティーンの繰り返しというのも違う気がします。
 
大切なのは、何をやったとしても、自分の心がワクワクしているか、好奇心に満ちて高揚しているか、という部分なのだと思います。まさに「合理的」から「神話的」への切り替えなのです。
 
レイチェル・カーソンの名著『センス・オブ・ワンダー』(新潮文庫)を思い出します。子どもを育むとは、神秘や不思議さに目を見はる感性を磨いていくことが大切で、そうすれば知識は自然と身についていく、と彼女は訴えます。亡くなった姪の幼い息子・ロジャーと過ごす日々を、美しい自然とふれあう体験をもとに、平易で詩的な文章でつづられた、とてもしなやかなエッセイです。

 その中で、こう指摘します。

「わたしは、子どもにとっても、どのようにして子どもを教育すべきか頭をなやませている親にとっても、『知る』ことは『感じる』ことの半分も重要ではないと固く信じています」

また、子どもの近くにいる大人の役割についても語っています。

「生まれつきそなわっている子どもの『センス・オブ・ワンダー』(神秘さや不思議さに目を見はる感性)をいつも新鮮にたもちつづけるためには、わたしたちが住んでいる世界のよろこび、感激、神秘などを子どもといっしょに再発見し、感動を分かち合ってくれる大人が、すくなくともひとり、そばにいる必要があります」

子育ての中で、親が子どもに対して最も口にしがちなのが、「早くして!」という言葉だそうです。それだけ日々、忙しさを感じているからでしょう。だからこそ、大人も自分の意識をちょっと切り替えてみる。そんな心の余裕があるといいのですよね。
 
どんなに工夫しても、なかなか現実的な時間は増えません。時間的な余裕を生み出すのは至難の業です。そうであるなら、心の余裕を生み出すしか方法はないのではないでしょうか。一瞬でもいいので、「忙しい中で自分の“ワンダーハート”を育てていく、今がその訓練期間なんだ」と言い聞かせてみませんか。ちょっと、そう思えるだけで、新たな風が心に吹き込んでくると思います。
 
この感覚は、仕事をしていても生かされることだと、私は実感しています。生産性や効率が重視される世の中ですが、数字には表れない、目に見えない価値を意識しながら働かないと、本当の意味で、人々の役に立つ新しいものは生み出せないと思うのです。
 
子育てを通じて磨かれた感性を、仕事に生かしていく。そこには男性だからとか、女性だからとか、関係ありません。まさにジェンダー平等の感性で、身近なところからシフトチェンジに関わっていく。それこそが、現代社会が抱える課題がなかなか改善に向かわない現状を前にして、枠組みを変えていく“小さな一歩”になると信じています。

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