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わが子へ、ゾンビだったときの話をしようか
うつ病の妻、小学3年、2年になる年子の娘と暮らす、みやもんと申します。今回は「ゾンビと子育て」について書きます。
「きょうはゾンビ鬼をしましたよ!」
フリースクールに次女を迎えに行くと、今日の出来事を先生が話してくれました。
「何それ?」と一瞬思いましたが、どうやら鬼ごっこの一種のようです。鬼にタッチされると自らも鬼になってしまい、やればやるほど、どんどん鬼が増えていくという遊び。そのさまがゾンビの増殖過程と似ているから、その名が付いたのでしょうか。個人的には「増やし鬼」の方がピンときます。
ゾンビという、おどろおどろしい存在と、弾けるような先生の笑顔とのギャップがすごくて、何だかおかしくて笑ってしまいました。
そういえば、私もゾンビになったことがあります。
といっても、鬼ごっこではなくて、体調を悪くしてです。「まるで自分、今ゾンビだ」と思ったことがあったんです。
あれはまだ、娘二人が保育園の年中、年少だった頃だと思います。家族4人の中で私だけがインフルエンザにかかってしまいまして。しかも運悪く、同じタイミングでぎっくり腰にもなってしまい、めちゃくちゃ苦しかったことがありました。
妻はというと、当時はうつ病の症状がひどくてほとんど起き上がれず、寝込んだまま。私のインフルエンザがうつってもいけないので、周囲の助けを借りることもできませんでした。子どもたちの食事やら身の回りのことを自分一人でしなくてはいけない……。
「これ終わったわ」
途方に暮れる中、いや、途方にさえ暮れさせてくれませんでした(日本語合ってるのか不明ですが、ともかくそんな感覚でした)。高熱で頭はぼおっとし、少し動けば走る腰の激痛に耐えながら、文字通り、地を這うようにして、寝室とキッチンの往復を図りました。
目覚めたら突然、巨大な虫になっていたグレーゴル・ザムザはどんな気持ちだったんだろう。なんてことを考えたような考えてないような、とにかく鬱々とした気持ちでいっぱいでした。あの時ほど、子どもの食事を用意することが困難だと思ったことはなかったです。自分でご飯や身の回りのことができないという意味では、子どもは弱者であり、その子を抱える親もまた弱者であることを痛感した出来事でした。だから、子育て家庭には国はもっと優しくしないといけないと思います、本当に。
読んでいるだけで体調が悪くなりそうような話ばかりで、ごめんなさい。だが、しかしです。突然、私の心は歓喜に満たされたのでした。
床に伏していた妻がトイレのため、起き上がりました。見ると表情は重苦しく、とても険しい。
「お前も俺と同じ、ゾンビか」(勝手に妄想し、妻よスマン)
絶望しそうになった私が視線を妻のTシャツに向けると、
そこには何と、
「Zombie is not dead(ゾンビ・イズ・ノット・デッド)」
と書いてあるではありませんか。
これまで何度も妻は、そのTシャツを着ていました。が、そんな文言が綴られていたとはつゆ知らず、今日まで過ごしてきました。
(後で聞いたら、妻も特に気にせず着ていたようです)
ソンビは死んでいない……
意味は、正直全く分かりません笑。が、私の不安定な精神状態においては、なぜか曙光のように映りました。いや、そんなに格好いいものじゃないか。なんでしょう、しょぼんとしている自分自身が突然、笑けてきたんですよ。“君はもうおしまい? 何、この世の終わりのように思い込んでるの”って、自分で自分をツッコむような感じ。今の状況を少し客観視できて元気が湧いてきたんです。
言葉というのは不思議です。人によっては何も意味をなさなくても、ある人や場面によっては、生涯、大切にしたくなるような希望の灯にもなり得るのですから。それ以来、「ゾンビ」という言葉が好きになりました笑。
何を書いているのか、だんだん分からなくなってきました。
要は今、長女は高熱を出して学校を休んでおり、次女は不登校で家にいて、今週は家族みんな大変で愚痴りたくもなりますが、一方でそこからしか見えない景色も貪欲に眺めてみようと思う、そんなようなことを書きたかったのです。良いネガティブ!
ザムザが登場する『変身』の作者カフカはこんな言葉を残しています。
いつだったか足を骨折したことがある。
生涯でもっとも美しい体験であった。
これもまた、意味が分かりません笑。ですが、ゾンビ・イズ・ノット・デッドと同じくらい気になる「良い言葉」です。そんな言葉にまた出会いたいな。
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